僕の彼女は品質保証 #46「あの世には、SNSは無いらしい。」
僕の彼女は品質保証である。
そういえばさ、という前置きで、彼女が言った。
「あの世には、SNSは無いらしいよ。」
彼女の夢枕に亡くなったお父さんが立ったらしい。
そして、
「あっちにはSNSは無いから、あまりこっちの状況はわからないんだよね。
しかもミャンマー遠いしよぉ。」と言ったらしいのだ。
あの世にSNSがあると思っていた彼女のお父さんの思考回路や
(ずいぶんファンキーなあの世生活を想像していたよな)
ミャンマーとあの世の距離感に遠いという概念があるのか、とか
つっこんで聞いてみたけど、彼女もよくわからないそうだ。
ちなみにお父さんは、彼女のお母さん(つまり妻)が寝坊して
仕事に遅刻しそうになったとき、夢枕に立って起こしてくれたらしい。
真面目な夫婦だ。
僕の彼女は、あの世にいっても、同じく品質保証である両親と、
便利で快適なあの世生活のために、
色々なシステムをテストするつもりでいるそうだ。
夢は所詮、記憶の整理中に脳みそが見せる影だ。
あの世にSNSが無いなんて、本当は誰にもわからないだろう。
でも、どこにだって生活と心があると想像してみるのも、
なかなかに楽しいんじゃないだろうか。
彼女と画面越しに会話しながら、僕は今日も一杯のコーヒーを飲んでいる。