Omnibus ~閉店30分前に来る女~ #4 「戻れる女」
久しぶりに会えることを楽しみにしていた。
雨のなか、傘をさして向かう。
いつもの通り、アイスコーヒーを飲みながら本を読む姿があった。
お待たせしてすみません。
雨すごかったね。大丈夫だった?
一つ年上のその人は、アフリカでホテルを経営した後、ビジネスコンテストで勝ってミャンマーではハウスキーピング事業を進めている。
クールな経歴を持ちながら、人間味があり、ツンとしたところが全くない女性で、そういうところを尊敬している。
何回目かに一緒に酒を飲んでいるときに、本の読み方の話になった。
最初を読んで設定を確認し、最後の結末を読む。
その結末になった理由を読むために中身を読む。
わたしは初めて、その読み方をする人に出会った。
そのときは、この人は理系的に設計して生きていく人なのかと思ったが、そうでもない。
いつだって、成功は身近なものだ。
インパクトも大事だけど、目の前の人も大事だ。
未来も大事だけど、いま誰かの未来が広がったことが大事だ。
彼女は名門女子大を卒業し、海外での起業を選んだ。
人と違う実現ができるのは、何を大事にするかを自分で選び、
いつでもそこに戻ってくるからなのだと思う。
将来の成功とか、そもそも成功を定義していないからわからない。
そもそも成功のための設計なんて、綺麗な理論になるわけがないのだろう。
明日また、自分と周りが笑っている。
戻ることは、いつでも許されている。