Omnibus 閉店30分前に来る女
ひとつかふたつ、星をつかめそうな夜だった。
久しぶりに会えることを楽しみにしていた。 雨のなか、傘をさして向かう。 いつもの通り、アイスコーヒーを飲みながら本を読む姿があった。
腕時計を見る。 日本語レッスンが終わって30分、そろそろ来る時間だろう。 視線を戻すと、暗闇の扉が開き、ひょっこりとこちらを覗き込む女性。
扉を開けると、いつもの席の向かい側に部下が座っていた。 彼がうどんと親子丼をかきこんでいる最中、向かいに腰を下ろす。
仕事を終えて家で本を読んでいたら、いい時間になっていた。 マスターに電話をする。 いつもの通り、黒蜜入りコーヒーと言う。 何分後と聞かれて、15分後と答えて、家を出た。